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最初に、そして後書き。


TOP30ブロガー賞受賞しました!!!
ありがとうございます!!!m(_ _)m
投票して下さった方々、ありがとうございました!!!

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初めまして。藤岡 響と申します。
こんなに長い話を書き終えたのは、初めてです。
(書いたのは初めてじゃないとかほのめかしながら…)

これは、後書きですが、最初に読んでもらうことになりそうです。
自分、あまり多くを語りたくない人間なので、
書いての感想などは、上ので終わりにいたしまして・・・
これ、「誰にも届かない」を読む際の、注意書きでも、書き残します。

コメントなどは、全てこの記事にお願いします。

☆挿絵の感想もお待ちしています♪

後は、思いついたら書かせていただきます。
それでは、一番前、一番下の「誰にも届かない:1」より、お楽しみください。

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2008.1/16:menu追記。

管理人小説サイト↓
空と粉雪ワンダーランド

2008.3/7:HP追記。


Written by Kyo Fujioka
Illustrated by ミー♪


誰にも届かない:20 [GBA2005ノベル]

『二人が行ってしまった後も、楽しい気分は去らなかった。
名前、言わなかったな……と俺も思った。
びっくりしたのと、照れてしまったので、上手く話せなかった。

また、来てくれる。

そう思うだけで、毎日の怯えも暗い気分も、少し楽になった。
今度は、自分から何か話さなくては、と考えていた。

今度はなかった。俺の家は襲撃された。
母さんと妹だけは守りたいと思った。
必死で、庇おうとした。必死で戦った。
……所詮幼い子供一人が勝てる訳なかった。

今思えばあの時に、ちゃんと話せればよかった。
照れずに言葉が出たらよかった。

記憶も、声も失くしてしまうなんて、その時考えもしなかった。

そう。
来ない未来に凄く期待していた。
明日来るかもしれないと思いを馳せていた。
曇った空を見ながら、晴れろ。晴れたら来るかもしれないと願ってた。

あれだけ必死さを、あれだけの希望を簡単に忘れてしまうなんて……
今思うと信じられない。

でも、俺は確かに記憶を失くしていた。

それなのに十年後。リシュは一目見て、俺をわかってくれた。
名前も思い出せない俺に、名前を呼んでくれた。

名前を呼ばれても、何か引っ掛かるだけで、全然思い出せなかった。
リシュのことを忘れて、何も話さない俺に。
リシュは愛想も尽かさず着いてきてくれた。離れないでくれた。

もう一度書く。
本当に、感謝している。

十年ぶりに届いた声も、今はリシュにも届かなくなってしまったんだな。
もう、誰にも届かない。

それでもきっとリシュは、俺の感情を受け止めてくれるだろう。
いつもの笑顔で、受け止めてくれるだろう。
戦争さえも止めてしまったリシュは、凄い、といつも思う。

最後に話せた言葉が、リシュの名でよかった。

照れずに、書く。
これからも、俺の隣にいてほしい。
俺の隣で、笑っていてほしい。
たとえ、俺が笑うことができなくても。

きっと、リシュがいてくれたら、俺は十年ぶりの笑顔を取り戻すだろう。
信じている。

少し、長い手紙になった。
字を書くのは、まだ慣れないから少し疲れてきた。
拙い文を、ここまで読んでくれてありがとう。

……シャイレ』

リシュは、読んでいる途中で、泣き出してしまっていた。
読み終わって、上げた顔。頬は涙で濡れていた。

「ありがと……!」

リシュは、今までで一番の笑顔を見せた。
いつもの微笑ではなく、まっさらな笑顔を。

シャイレは、また口をもごっとさせた。
そして、とてもぎこちなく笑顔を作ろうとした。

それは確かに笑顔に見えた。
とても綺麗でまっさらな笑顔だった。

シャイレは、リシュの肩に手を置いた。
そのままギュッとリシュを抱き寄せた。

二人の上には、綺麗な青空が広がっていた。

End......


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誰にも届かない:19 [GBA2005ノベル]

リシュは、またあの小さな家の前に来た。
シャイレはもう来ていた。
家の前に、座っていた。

リシュは子供達に、呼び出されたのだ。

「この前の場所に来てくださいだって」

どうやってその言葉を子供達に伝えたのかが凄く不思議になったが、リシュは言われた場所に来た。

シャイレは、リシュの姿を見つけると立ち上がった。
リシュの方に、素早く歩いていくと、封筒を渡した。
封筒には、綺麗な青い模様があった。
リシュは、凄く驚いた表情でシャイレを見た。
シャイレはいつもの無表情で目を逸らすが、リシュには照れているとわかった。
照れて目を逸らしたまま、シャイレは一枚の紙を取り出した。
紙には、丁寧な文字が並んでいた。

『字、施設のみんなに教わった。
教わったことないから、今まで書けなかったんだ……。
みんな、親切に頑張って教えてくれた。
手紙、字が読みづらいかもしれないけど、今読んじゃって……』

リシュが、驚いた表情を崩さずにシャイレを見つめる。
シャイレは相変わらず照れて目を逸らす。

「いつのまに……」

呟きながら、リシュは封筒を開けた。
中の便箋も綺麗な模様が描かれていた。
そこにも、丁寧な字が並んでいた。
書ける様になったばかりなのに、綺麗な字が並んでいた。

『初めて、手紙というものを書く。
何を書いていいか……何から書いていいか……正直わからない。

まず、俺の失われた記憶から書こうと思う。
思い出させてくれたのは、空とルラさんと、リシュなんだ。
本当に、感謝している。

俺は、ホープウェイで、生まれた。
父さんは、物心つく頃にはもういなかった。

母さんと、妹と、ずっと一緒に住んでいた。

周りの、友達とか知り合いとか、みんな殺されたり、連れて行かれたりしてしまっていた。
母さんは、危険を感じて、誰にも見つからないような家に俺達を連れて移った。

そこで、三人で静かに暮らしていた。
俺はいつも外で空を見て過ごした。

退屈にもなりそうで、いつ襲われるか怯える毎日だった。
空を見ていると、そんなことも受け止めている気がしていた。

リシュとルラさんが俺を訪れてきたのは、いつもみたいに俺が空を見ているときだった。
リシュも覚えていてくれたんだよな。

誰も来ない場所に二人が来たから、凄く、凄く驚いた。
でも、必死に話しかけてくれたのが、嬉しかった。
とっても嬉しかった。

久しぶりに家族以外と話せて、気分が凄く明るくなれたのを感じた。』


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誰にも届かない:18 [GBA2005ノベル]

『リシュ……リシュ……!?』

慌てて呼びかけ、リシュの肩を叩くシャイレ。
リシュは、目を開かない。

必死に呼びかける。
それでも、また言葉は声にならなかった。
何度も何度も、リシュに呼びかけた。
一度も、声にならない。

シャイレはバンダナ越しに喉をつかみながら、叫ぶかのように、呼びかける。
どんなに頑張っても声を出せない自分に、苛立っているかのようだった。

リシュは、目を開かない。

シャイレは、リシュの上半身を抱き起こす。
掠れた息の音だけでも届けたいのか、リシュの閉じた目を見て、必死に呼びかけていた。
抱き起こしたリシュを揺すっても、閉じた目が開く気配は見えない。
どんなに頑張っても目を開かないリシュに、シャイレは強い不安を抱いた。
最悪の場合が、頭をよぎる。

『リシュ……リシュ……!』

呼びかけるうちに、シャイレの瞳が潤んできた。
自分の目に溜まってきたそれを、なんて呼ぶかシャイレは知っているだろうか?
シャイレは記憶にはないはずのその感覚にも気づかずに、呼びかけ続けていた。

シャイレの瞳に溜まった涙は、表面張力に耐えられずに、ポトリと落ちた。
涙は、リシュの頬に落ち、伝って流れた。
リシュが、泣いたかの様にも見えた。

「…………リシュ…………!!!」

突然発せられた声に、空気が震えた。
掠れてとてもぎこちない小さな声が、その空間に響いた。

シャイレが、驚いた表情を見せた。喉に手を当てる。
もう一度、声を出そうとしても、声が出ることはなかった。

リシュが、うっすら目を開けた。
シャイレを、見つめる。
シャイレもリシュを見つめる。

「……きっと……」

微かなリシュの声に、シャイレは耳を澄ます。

「……シャイレの……お母さんが、少しだけ声を与えて……くれたんだよ……」

何もできずに、そのまま動かないシャイレ。
リシュは、また瞳を閉じてしまった。

気がつくと、部屋のベッドにリシュはいた。
ベッドの外にシャイレがもたれかかっていた。

「……シャイレ……?」

すぐに、リシュの方を振り向くシャイレ。
リシュは、悲しげな微笑を浮かべていた。

「ごめんね……シャイレの伝えたいこと、聞こえなくなちゃった……」

シャイレは少し間をあけ、静かに頷いた。

「なんだかね……普通の音も、よく聞こえないんだ……

本当は私、耳が悪かったみたい。きっと……私の両親が殺されてしまったあの時から……」

シャイレは、何か言いたそうにリシュを見た。
何を言いたいのかも自分でつかめないまま肩を落した。

「……でも、全然聞こえない訳じゃ、ないから。」

シャイレは、また静かに頷いた。
二人の間を、いつもの静かな時が流れた。


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誰にも届かない:17 [GBA2005ノベル]

「この戦争は、私達に何をもたらしてくれるのですか?」

増え続け、増え続け、会議室の密度が、増していく。
現れた者達が、織り成す雰囲気も増し、重くなっていく。

「列強の名などより、私達は、私達の幸せを返してほしいです」

老若男女問わず、増えていく。
揺らぐ彼らは、蜃気楼のよう。
重役達は、何も話せない。
現れた者達の雰囲気に、のしかかられている。

「窓の外を見てください」

窓の外に、遠くに見えるホープウェイ。
壊された建物。無残に打ち砕かれた生活の跡。
古びた三輪車、銃痕の残る壁。

東に見える、イースタン。
兵士に銃を向けられ、怯える少女。
見つからないように、身を潜める少年。

眼下に見える、アースウェス。
傷だらけで、倒れた母親。
ただ取り残されなす術のない、子供。

「この光景に。風景に。現在に。幸せを見出すことができますか?」

また、密度が増した。

「終戦宣言を、出してください」

シャイレは、必死に外を駆け回っていた。
耳あてつきの帽子のようなものを被っている。
リシュに貸したバンダナは畳まれて、枕元に置いてあった。
それで、口元を隠していた。
兵士に気づかれても、すぐに振り払って逃げていた。

どの道を走っても、リシュは見つからない。
どの路地裏を走っても、リシュは見つからない。
どれだけ捜しても、リシュは見つからない。

必死でリシュの名を呼ぶ。
必死にリシュの名を叫ぶ。

それでも、シャイレの声は、発せられていない。
発せられるのは、微かな息だけ。

路地裏をよく知らないシャイレは、道に迷っていた。
手当たり次第に、走っていたのだ。
目の前に、三方向に分岐する道が現れた。
シャイレは足を止めた。
三方向を眺めて、キョロキョロする。

「空を眺めるといいよ」

そんな時に突然思い出す、ルラの言葉。
どうしていいかわからなくなっていたシャイレは、何か変わるとは思えなかったが上を見た。
バンダナの隙間から、開いた傷跡がチラリと見える。

まっさらな青い空に、雲が流れていく。

シャイレは、意を決して右に曲がる。
また、真っ直ぐ走っていく。

走っていくうちに、少し広い場所に出た。
周りは大きな建物に囲まれていた。
右を向いたら、小さな家がそこにはあった。
誰にも見つからないような場所に、ひっそりとあった。

不思議と湧き出る、既視感。

そんなものに、構っている場合ではなかった。
家の前に、リシュが倒れていた。
すぐにシャイレは駆け寄った。

リシュは、弱弱しく目を開けていて、凄く疲れきった様子だった。
帽子と、口元のバンダナを外した。

『……どうしたんだ……』

シャイレは、必死に心の中でリシュに語りかける。

「もう、戦争なんて終わったよ……」

「…………?」

「みんなに、助けてもらったの。私の力で、死んでしまった人を呼び寄せて。

戦争を始めた人達に、みんなの意見を、少しだけ伝えてもらって……

……戦争をやめるように、言ってもらったの。

私は……みんなの呼び寄せるだけで、精一杯で……何もできなかったけど。」

「…………」

「もう……疲れちゃった……シャイレの声も、よく……聞こえないんだ……」

『……あの力が、よく働かないのか……?』

「いや……使い果たしてきちゃったみたい。」

驚くシャイレ。
リシュは、シャイレのほうを向き、何か言いたそうにして、そのまま目を閉じてしまった。


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誰にも届かない:16 [GBA2005ノベル]

アースウェスの会議室。
いかにもな重役が、そこが居場所とでもいうようにどっしりと座っていた。
四角いテーブルを囲んでいる。

「B-e'sはまだ見つからないのか?」

「そうらしいですぞ。」

「自分の正体に気づいたのか?」

「正体とは何だったかね?」

「あのホープウェイ出身の。」

「それは知っている。」

「戦いの才能に長けているまだ若い少年。」

「それも知っている。」

「重傷を負い、声を失った……」

「喋れないのか。本名は?」

「本名は忘れた。」

世間話でもするかのように、続いていく終わりなき会話。

「何故アースウェスの訓練場に?」

「戦いの才能に長けているからだ。」

「知っている。それに先程聞いた。」

「B-e's宅に襲撃した時に、拉致した。」

「自分は、そのことを?」

「知っている素振りを見せたことがないらしい」

始まりから終わりまでは、一息入れる間もなく続いていく会話。
そして、話の目的を思い出したかのように、また会話は始まった。

「それより、B-e'sの行方だ」

「アースウェス南で、一度発見されたのだが……」

「されたのだが?」

「見つけた兵士達は、一掃された」

「…………」

「…………」

ここで、重役達は、"戦いの才能に長けた"を思い出す。
本当に、兵士達を指揮できているのかという会話が続いていく。

「しかし……私は、B-e'sを刺したあの時を忘れてはいない!
B-e'sの抵抗も、全くかなわなかった。
兵士達が、一掃されるなんて……」

「当時は七歳なのだろ?」

「B-e'sは張り倒された……」

「あれから、十年経つのですぞ?」

「…………」

「…………」

彼らは、自分達が少年を訓練して、強くしてしまったと気づいていない。
本当に、兵士達を指揮できているのだろうか?
何とも言えない空気が流れる中、会議室には似つかわしくない少女がいた。

「何故、戦いの才能に長けた少年を訓練場に入れたのですか?」

静かな問いかけが、会議室に響いた。
誰も少女に気づかない。
これは、稀に間抜けな会話をするからではない。
少女が気配を消しているからである。

「愚問な。戦いに勝つためだ」

「何故戦うのでしょう?」

「ホープウェイの土地を獲得するためだ。今時、そんなことも知らないのか」

重役達は、会議室にいる人間が、一人どころか、二人も増えていることに気づかない。
少女が、今度は二人になった。

「ホープウェイの人達は、居場所をなくしますよね」

「邪魔だから、殺したり、奴隷にしたり」

「何故彼らはこんな目にあわなければならないのだろう?」

会議室に増えた人数は、三人になる。
四人になる。五人になる。

「街の兵士は、ホープウェイの人達を脅かすために……戦うことになっています。」

「……ホープウェイを獲得し、アースウェスをより列強の名に並べるためだ……」

重役が、呟く。未だに、増えた人数に気づかない。
現れた者達の織り成していく不思議な、現実味のない雰囲気にただ、飲み込まれていく。

「あなた達以外、誰もそんなこと望みません」

「この国が、列強の中に、名を連ねたとしても、私達の何が取り戻せるのですか?」

「私達の家族を、私達の命を返してくれるのですか?」

重役達は、既に何も答えない。
雰囲気に全て捕らわれていっている。

現れた者達の向こう側に、現れた者達の背後にある風景が映っているとも、気づかない。
現れた者達を通して、向かいの壁が見えると気づかない。

「このまま戦争を続けて、国中みんなが、亡くなったらどうなるでしょう?」

「残るのはあなた達だけ」

「そしたら、あなた達だけで戦争をしてくださいね」

「私達がいないと、国は成り立ちませんよね」

問いかけと、意思表示は、終わらない。


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誰にも届かない:15 [GBA2005ノベル]

漠然と、何処だかもわからない場所にシャイレはいた。
何故だか何処だろう?と考えさえしなかった。
そして目の前に、誰かいる。

ショートのブロンド、水色に近い青い瞳。
活発な雰囲気がありありと伝わってくる、ハツラツとした表情。

「……あなたは……」

ぼんやりとシャイレは呟いた。
自分が話せているという不思議な事実に気づきはしなかった。
目の前の少女は、フフン、と笑った。

「君はいつも寝付けないみたいだけどね。
いつもいつも同じ夢しか見ないらしいし。しかも毎晩?
でも、今夜だけは、君の夢に乗っ取らせてもらうよ。……ね」

最後の一言は、少しイラズラっぽい感じを含ませて、少女―ルラは言った。

「……夢……」

またぼんやりとシャイレは呟く。

「シャイレ君、君は記憶がないんだって?」

シャイレはコクリ、と頷く。

「大丈夫。私が予言しよう。すぐに取り戻せる。
手がかりは、いつもすぐ傍にあるんだよ。
後ね、空を眺めるといいよ。……ね」

また、最後の「……ね」で語尾が上がった。

きょとん、とするシャイレ。
無表情のまま首を傾ける。

「最近、あまり上を向かないみたいじゃない。
記憶を失う前も、今も……綺麗な空が広がっているじゃない。……ね」

唖然としたままのシャイレ。
何か引っ掛かる気がする、それでもそれが何なのかわからない。
考えあぐねていると、突然思い出したかのようにルラが話し出した。

「ベッドは、そのまま使ってていいからね。もったいないから」

更に唖然とするシャイレ。
思いつく言葉も、思い浮かぶ言葉もなかった。
ただ、言われたことだけが反芻していた。

「君は、せっかく綺麗な顔してるんだから……顔を上げて、前を向いて。……ね」

言われて少し、顔を上げる。完全までとはいかないが。
潤んだような青い目が、光を受けて輝いていた。

「リシュを、宜しくお願いします」

シャイレの空のような透き通った青い目を、見つめてルラは頭を下げた。
つられたのか、了解したのか、シャイレも頭を下げた。

「…………」

目が覚める。
次第にはっきりとしてくる意識。
自分が、何か重要な夢を見てしまったらしいことに気づく。

リシュに伝えなくては!

という感じに、ガバッと起き上がるシャイレ。
隣のベッドを見る。
リシュはいない。

ベッドから降り、コートを着て部屋を見回す。
リシュはいない。

嫌な予感がして、食堂まで走るシャイレ。
リシュの姿はなかった。


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誰にも届かない:14 [GBA2005ノベル]

布の上には、一人の少女が横たわっていた。

「……ルラ……?」

青ざめたリシュの声は震えていた。
ショートのブロンド。固く閉ざされた瞳。
活発であったという面影は、微かにしかなかった。
何箇所にも及ぶ傷跡が痛々しかった。

リシュはその場に崩れ落ちた。
そのまま何も言えずに。そこだけ時間が止まってしまったかのように。

動かなかった。動けなかった。

ただ目の前に横たわる事実がリシュを縛り付けた。

何で……何で……?

繰り返し頭をよぎる言葉も声にならなかった。
既に、たくさんのものを失ってきたリシュに、この喪失は大きかった。

シャイレは、横たわる少女を見て立ち尽くしていた。
結局リシュに何もできなかった。
そんな自分を嘲笑するかのようにも立ち尽くしていた。

どれだけの時が経っただろう。
長いようにも短いようにも捉えられた。
呆然自失で動けなくなったリシュをシャイレが部屋に連れて行った。

さっきよりずっと、ずっと重い静寂が部屋にのしかかっていた。
ベッドの中でリシュは泣き続けていた。
必死に声を押し殺しているので、シャイレにまで泣き声は届かなかった。
それでも気配や雰囲気でわかっているのかシャイレは何も言わなかった。
何も言えなかった。

ベッドに背を向けてジーっと床を見つめ続けるシャイレ。
背後から声がする。

「今日はベッド、使っていいからね」

シャイレは凄い速さで振り返って、リシュのほうを見る。
リシュは顔を上げていないが、シャイレはフルフルと首を横に振る。

「……使わないでいると、ルラはもったいないって言うから……」

シャイレはリシュのほうを真っ直ぐ見る。
もしかして……また声でも、ルラの声でも聞こえたのだろうか?
リシュのほうを見たまま、シャイレはきょとんと首を傾けた。

「せっかく二つあるんだから……」

また顔を上げずにリシュは言う。
腑に落ちないという感じを少し漂わせているが、シャイレは頷いた。

リシュが、泣きつかれて眠ってしまった頃、シャイレは立ち上がった。
リシュに言われたとおり、モソモソとベッドに入った。
布団の中でもごもごしている。

……やわらかい布団に感動しているらしい。

人の温かさに触れた記憶がないシャイレは、リシュと出会ってからの起こること一つ一つに感動していたらしい。
始終無表情であるが……。

布団の端をギュッと抱きしめて、亡きリシュの親友に思いを馳せた。


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誰にも届かない:13 [GBA2005ノベル]

そしてまた二人に朝が来た。
カーテンを開けたら、空は曇っていた。
リシュが起きたら、シャイレは灰色の空を眺めていた。

「おはよ」

『……おはよ……』

リシュの微笑、シャイレの無表情。
何も変わらず、一日は始まった。

リシュが、お姉さんぶりを発揮し、シャイレが始終硬直状態に陥る朝食も終えた。
二人は、部屋に戻った。これからどうするか、を話し合うことにしたらしい。

「行くところがないならさ、ここにいてもいいんだよ?」

「……」

「嫌なら……いいんだけどさ」

シャイレはフルフルと首を振った。

『・……本当に、いい、のか……?』

「もちろんです」

『……何も、できない……のに……』

「大丈夫です。できることきっとあります」

シャイレは、真っ直ぐリシュを見た。
リシュはいつもの微笑みを浮かべた。

答えは決まっていただろうに、何か考えていた。

『……ありがと……』

シャイレは、何度目になるかわからないお辞儀をした。
顔を上げたら、また前髪が片目にかかった。

それから、二人は何も言わずに部屋にいた。
静かな時を、静かな空気を共有していた。

曇り空からのそんなに明るくない光が、リシュに、シャイレにぼんやり射す。
リシュの何か不安そうな顔が曇り空に合っていた。

そんなリシュに気づいていたシャイレは、何を言っていいかわからずにいた。
何も言えないので、チラッとリシュに視線を移しては戻していた。

突然ドアをノックする音が聞こえた。
リシュが伏せていた顔を上げる。

ドアは開かずに声だけが聞こえてきた。

「リシュ、ちょっと……」

先生の声だった。その声に、かなりの重さを感じた。

リシュがさっと立ち上がる。
先程より増した不安を募らせながら部屋を出て行った。

リシュのあまりにも不安そうな様子が心配らしいシャイレも後を追った。

玄関ホールのようなところに来た。
それなりに広々としている。
豪華という形容より、暖かいという形容があう雰囲気だった。
何もかもを暖かく受け入れる、という雰囲気だった。

シャイレは最初、何故か裏口からコソコソ入ったので、ここに来るのは初めてだった。
相変わらずの無表情のままキョロキョロしていた。

ホールの入り口付近。
白い布が敷かれていた。

その上に乗せられていたのは、リシュが一番見たくないものだった。


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誰にも届かない:12 [GBA2005ノベル]

シャイレの首は上下に微かに揺れて、寝てしまったかのように見えた。
それでもリシュが部屋に戻ってくるとすぐに顔を上げた。

シャイレが何か尋ねたそうにリシュを見る。
いつものように、リシュはそんなシャイレの気持ちを察して、隣に座った。

『……ホープウェイって、どんなところ……?』

相変わらずのポツリポツリとした話し方で、シャイレは尋ねた。

「今は……壊滅状態、かもしれないね……

自分達の居場所を奪われそうになったわけだから……
ホープウェイの人達も、多少は反撃したみたい……
……あまり争いは好きじゃないみたいだけど。

でも、それこそ無差別にその人達は、殺されてしまった……。

何もできずに佇んでいる人達も、誰かを守ろうと必死になった人達も。

殺されるか……奴隷にされた、みたい……」

シャイレの伏せた目。いつもは無表情なその目が、疲れた風に見えた。
その時の目は、リシュでなくてもそういう風に見えたであろう。

『でも、軍事施設に入れられた話なんて聞いたこと、あるか……?』

「……ないなぁ……」

即答だった。
ホープウェイの人が軍事施設に入れられたら、自分の国を壊す為の訓練となってしまう。

『そう、だよな……。

俺は、何者なんだろう……?』

部屋に、フゥー……というシャイレのため息が聞こえた。

『どうあがいても……あの時のことしか思い出せない。

あの時の痛みも、あの時の光景も、はっきり……覚えてるのに……』

「シャイレは……楽しい記憶、ないんだね……」

シャイレは、遠くを見た。壁に阻まれても、もっと先へと伸びる視線。
軽く眉を寄せる。
必死に思い出そうとしているのに、ただ頭の中には空白。

声を失くしたその時と、ただひたすら心を無にして、感情を無くして過ごしていた訓練の日々。

他に思いつくものなどなかった。

何か重いものを乗せられたようにがっくりうなだれるシャイレ。
青い目に映った失望が物悲しかった。

気がつくと、リシュが心配そうに見つめていた。

シャイレはそれを見て、唇をもごもごさせた。
また必死に笑おうとしているのに気づいたのは、リシュだけだろう。

リシュは心配させてしまったのを悪いと思って、笑顔を作ろうとしたことにも気づいていた。

「部屋ね。燃えちゃった部屋もあるから、足りないの。空いてる部屋がないんだよ。
この部屋で平気?」

シャイレはこくりと頷いた。
かなりの人見知りのようなので、願ったりかなったりだったのかもしれない。

「ルラ、夜に帰ってくるかもしれないから……ベッドは使えないかな?」

シャイレに対してと自分に対して呟いて、収納から毛布を出した。
「ごめんね」と一言、毛布を差し出した。
シャイレは、首を横に振り頭を下げて、毛布を受け取った。

『……帰って、来ると……いいな。』

相変わらず途切れ途切れの言葉を発して、シャイレは首を傾けた。
長めの前髪が、シャイレの片目を覆った。


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